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問いと答えの距離

日中もやや涼しくなり、外遊びやお散歩がしやすくなってきました。

早いもので10月も今日で終わり、今年も残り二か月となりました。

月末なので少し保育について論じようと思ったのですが、長くなってしまったので、先に子どもたちのかわいい写真を載せます。稚拙な文ではありますが、園長が何を考えているのか、ご興味のある方は最後まで読んでみてください(^^♪

 

問いと答えの距離

「問いには必ず答えがある」、「答えは一つ」といった誤った固定観念が、世の中には蔓延っています。正解は一つだけ。あとは全部不正解。という環境で育ってしまうと、「問題には答えがある」、「正解すると褒められる(評価される)」、「正解を出すことが最も重要である」といった誤った価値観を持った人間に育っていく事になります。「間違った答えをすることは恥ずかしい」という価値観さえ植え付けかねないでしょう。

その結果、自分なりの考え(新しいアイデア)を生み出すことができなかったり、失敗を恐れて行動を起こせなかったりといった実害が出てきてしまいます。

先日、あるクラスの月刊絵本にシールを貼る活動を、見学しにいきました。動物たちにお洋服(シール)を着させてあげる活動です。始まるやいなや、子どもたちは口々に「ねー、どこに貼ったらいいの?」、「これは誰のお洋服?」、「ここであってる?」と問いかけてきます。私は、「誰に着させてあげてもいいんだよ」と伝えましたが、一向に貼ろうとしません。しまいには、子どもたちは担任の先生に聞きに行く始末でした。

男の子がスカートを履いていても、女の子が野球キャップを被っていても、小さな子が大きな服、大きな子が小さなカバンを持っていても、私は別にいいと思います。

でも、こんな些細なことでさえも「正解」ありきの子どもたちは、「正解」があると信じて疑わず、それがわからないために不安で行動が出来ません。

このままでは、これからの人工知能(AI)社会を生きていけません。正解ありきの人間に育ててしまうことは、AIの言いなりになる“ヒト”を育てていることと同じです。そうではなく、これからの時代で重要なのは、「AIを活用し、正解のない問いに人間らしく正対することのできる“人”」に育っていくことだと思っています。

こうした課題を受け、私は子どもへの問いかけをする際に「問いと答えの距離」という概念を重視しています。

人は、問いから“答え(らしきもの)”に向かって歩みだし、そこにたどり着くまでの過程で成長するのです

決して、答えを知ったときや、何かができるようになったときに成長しているのではありません。だからこそ、問いと答えの間には、距離が必要になってくるのです。

大人はついつい、親切心で答えや近道を教えようとしてしまいます。子どもが困っていると、助けたくなります。

子どもは、できるようになったことを褒めてもらうと、うれしいですし、タイミング的にもわかりやすいです。

このある種両者Win-Winの関係が、成長の機会(過程)を奪うと同時に、「正解ありき」の誤った価値観を植え付けてしまうリスクを潜在的に有しているのです。

大人の知っている「正解」ベースで子どもと関わっていくことは、子どもの発達に関してあまり意味がありません。そもそも、その「正解」も“答えの一つ”に過ぎないというパターンも散見されます。“正解”を教え込んだり、”正解”へのたどり着き方を教えたりするよりも、その子が“答え”を導き出す過程をともに歩んだり、見守ったりするという立場に立つほうが、子どもの発達を促していくうえでは確実に有意義です。これからのAI時代を生きていく子どもたちにとっては、なおさらです。

子どもの数だけ答え(最適解)が出てきて、子どもの数だけ育ちの形があるのが自然なのです。

子どもの育つ力を信じましょう。

今月もありがとうございました!来月もよろしくお願いいたします!